研究背景と目的

近代における日本仏教諸宗派の海外布教活動は、ハワイ・北米・南米・朝鮮・台湾・中国・満州・樺太・南洋などの国・地域において、日本人の移民・植民を主な対象に展開しました。近年、主にアジア太平洋地域における日本仏教に関する研究が盛んとなり、研究代表者も参加した共同研究などで、帝国主義やナショナリズムの問題などが多面的に論じられています。

1945年のアジア太平洋戦争終焉を期に、植民を主な対象に展開した布教活動はほぼ断絶しましたが、移民が数多く生活していたハワイやアメリカでは、戦時中の強制収容という危機的状況があったものの、現地檀信徒の支援によって戦後も寺院が存続しています。本研究の対象とする文献資料や文化財が、ハワイ寺院に数多く遺されていますが、従前の海外布教研究において、特に文化財は寺院に不可欠にもかかわらず着目されてきませんでした。そこで本研究では、日本仏教の海外布教活動が、海外日系人社会の中でどのように機能したのかについて、これまで研究の対象とならなかった文献資料や文化財を研究の中心に位置づけて解明することを目的としています。加えて、本研究で取り扱う文献資料・文化財の持つ歴史的価値を明らかにし、現地の僧侶や信者が次世代へ継承するための環境整備に繋がる研究を目指しています。

本研究が文献資料や文化財の調査・整理・考察・情報公開だけではなく、その継承を目的とする理由は、多くの仏教文化財が破損の危機を迎えていることに他なりません。経年劣化のみならずシロアリ・カビによる破損も多く、こうした状況から本研究のように宗教史、移民史、文化財保存学の専門家による共同研究チームが対応することによってこそ、本研究の目的が果たされると考えています。

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